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数年前に、母方の祖父を亡くした時の体験談です。

祖父母の家はかなり辺鄙な田舎にあり、看取りに駆けつけていた母を追って葬儀に向かう際、私の父は「斎場で行う葬儀と違ってこの地方のお葬式はお父さんも初めてだし、はっきり言ってどんな風に進むのかよくわからない。おじいさんにお別れの言葉を言って、あとはなるたけ静かにしていよう」という風に新幹線の中で言い含められました。

実際に葬儀の場につくと、私は愕然としました。大きな平屋の祖父母宅はふすまが取り払われて巨大な式場と化しており、小さい頃から慣れ親しんだ家とは別の場所のようでした。見たこともない人たちが大勢行き交い、私たちはよそよそしく取り扱われて、放心したように祖父の亡骸わきに座る祖母だけが異様なコントラストを成していました。

地方ならではの豪奢なスタイルで、お通夜と告別式が進みました。私が一番ショックを受けたのは、納骨が済んで参列客が祖父母宅にかえってきた時の「会食」です。親族の司会で宴会が始まり、お酒の進んだ年配男性たちが大きく笑いあう声を聞いて、私は混乱していました。

私の経験不足、そして地方文化の違いというのはわかっているのですが、最後に笑って大宴会、というのがどうしても辛かったのです。私を今まで何十年もかわいがってくれた祖父がいなくなり、今日初めて会った人たちに愛想よくお酌をしてまわらなければいけない…というのが、辛辣な皮肉に感じられてなりませんでした。悲しい思い出です。